竹林のひと

中国留学をしていました中国のことを書いてます。読みやすさを考慮していません。記事はアップしてから修正する派です。

明石真の『体内時計のふしぎ』

 

 

 

明石真『体内時計のふしぎ』を読んだ。

 

自分は困るくらい朝型である、というか、早起き人間である。たとえ日中に寝不足になろうと朝は必ず早起きしてしまう。休日でも6:30には起きてしまう。最近めっぽう気温も初夏になってきて、日射時間も伸びてきて、目が覚めて時計を見ると5:30だということもある。さすがに支障をきたすのでその時は二度寝を意識的にするが、それもどうもうまく効かない。6:50頃にはしびれを切らして布団から起き上がる。一方夜は12:00を超えるともう気分が悪くなってくる。体全体が体調不良を訴え始めるので、寝ないわけにはいかない。この体内時計というのは自分の中ですごいう強固に働いているのだろう、いまいちど体内時計について考えるテーマとしてこの本を読んでみた。今回はこの本の内容を簡単にまとめて、最後に個人的な課題と感想を残しておこうと思う。

 

本書の基本的な内容は、「体内時計に逆らう現代人の生活により生じる様々な支障を理解する」といったところ。

 

現代病は、その多くは遺伝ではなく環境要因によるもの

現代病には「遺伝的要因」と「環境的要因」の二つにわけることができます。

遺伝の話をすると、生命は長い時間をかけて進化していきます。しかし、人間の生物的進化には非常に時間がかかり、遺伝子の構造は数百年程度では大きな変化は生じません。そのため、したがって、現代疾患の多くは、環境的要因に由来するでしょう。

人間を例外とせずあらゆる生物は、地球の一年、一か月、一日といった様々な周期に対応できるように、長い長い時間をかけてその環境に適応していきました。これまでの進化では長期的に適応していくことができました。しかし、ここ最近の社会はあまりに急激に変化しました。世の中は「24時間社会」となり、夜でもコンビニが営業しているだけでなく、インターネットが普及し、昼夜にかまわず携帯やパソコンを使用することもできます。この変化のスピードは、適応能力うんぬんでは追い付かないものとなっています。それによって今さまざまな疾患がおきています。このような、自然界の周期と相反する行動が現代病として、健康に多様な面から害を及ぼす原因として潜んでいることを知っておきたいところです。

 

 

 

時差ぼけは日常で起きている、平日と休日の睡眠差

日本から時差の多い場所に移るときに生じる「時差ぼけ」は日常でも起きています。平日と週末の時差ぼけです。平日は朝早く出勤し夜遅くに寝る、睡眠時間が足りないから週末は遅くまで起きて朝はゆっくり起きることで平日の睡眠負債を返上する。。。。

そして再び月曜日からは無理やり元の生活に戻そうとする。

皆さんもこのような生活に身に覚えがあるのではないでしょうか。

しかしこの生活は一種の「時差ぼけ」の症状を生みます。海外に行くことで時差ぼけを感じ、体調不良になるのと同じように、このような時差ぼけの症状が慢性的に続くと、現代病のリスクも高まっていく、ということです。

平日と休日の睡眠の差、すなわち睡眠負債は身体に大きな負担をかけます。しかし

この差はどんどん開いていて、2002年から2010年の八年間のみで平日の睡眠時間は30分以上短くなっているという研究結果もあります。

 

ブルーライト照明と正しい利用

この生活の変化の原因は間違いなく「24時間社会」、インターネットの深夜までに及ぶ利用などがあげられるでしょう。またさらに根本的な原因として、「照明」があります。最近の光には「ブルーライト」を含む蛍光灯のような質の明かりが増えてきました。太陽は日中は青い光を多く含んだ光で昼を照らし、夕焼けが赤いように、夕方にかけて赤い光の波長が優勢になり、夜には沈んで一日を終えます。しかし近年の照明によって夜間でもブルーライトを浴びることができるようになり、これが身体に影響を及ぼすようになっています。特に子供は眼球がまだ光の透過率が良いので、影響を受けやすいようです。

 

近年の照明には、家庭用の照明としてもブルーライトが使われています、特に蛍光灯が登場したころは、本当に光がまぶしかったものです。しかし最近主流のLED照明には色や照度を調整する性能があり、また光の質を調整することが可能になりました。これらをうまく使って、昼はふつうの蛍光灯、夜は夜間モードの機能をうまく利用することが必要です。

 

もともと、人間は日没後は光を利用しなかったのだから、このように調整することは身体によいといえるでしょう。

 

 

 

体内時計のかく乱により影響する疾患

本書では以下の現代病を引きおこすと記述しています。

【不眠、糖尿病、ガン、動脈硬化、うつ、認知症、生理不順、胎児への影響、流産、老化】

 

ここでは、いくつか興味深かった部分を抜粋します。

体内時計とガンの関係

皮膚がんの実験

マウスの皮膚に紫外線を当てて、皮膚がんのリスクを研究するもので、一方は午後四時、もう一方は午前四時に紫外線を当てて皮膚がんの発生頻度を比較します。すると、午前四時のマウスは二倍以上も皮膚がんになりやすいという結果になりました。

なぜなのか。

生物にはガンの原因となる細胞の異常活性を防ぐための修復能力が備わっています、しかしこの活性にも効率の良い修復のために一日のうちにリズムがあります。つまり、皮膚の場合、一日の紫外線を浴びて、夕方に修復能力をアップさせることでより効率の良い修復を行うことができるようになっていたのです。午前四時に紫外線をめいっぱい浴びるというのは体内のリズムと矛盾していたため、リスクが上がったのです。

これは皮膚だけのことでしょうか。

その他臓器も差異はありません。食事、運動、睡眠、すべてのリズムが調節された生物のからだでは、臓器も夜には休息に向かいます。この時に食事をとったりリズムの狂った生活を続けると、昼と同じことをしても、修復能力に差があり、臓器に大きな負担がかかることがわかります。こうして体内リズムのズレがガンと関係していくのです。

 

逆に、ガンの副作用を抑えるために、この体内時計の利用が有効であるという意見も出ています。

抗がん剤の治療では、正常の細胞をも破壊してしまいます。しかし、早朝はこのような正常な細胞の活動がまだ活発でないため、正常な細胞への負担は小さくなり、副作用が比較的抑えられる、というのです。これによって同じ量に対する身体への負担も軽減されるので抗がん剤の量を増やすこともできるといわれています。

 

 

体内時計とは、体内の活動を適正時間かつ効率的に行うために生まれたタイミング

 

恒常性をうまく機能させるために、そのタイミングを予想して活動するようになったことが体内時計の始まりだ。

また、寝ることで脳を休ませているように、臓器も休ませる必要がある。こうして臓器もリズムが生まれたのだ。

 

 

なるほど、コンビ二は雨の日には傘を売り、夏には熱中症予防の商品を売る。こんなに疾患を生むんなら、体内時計って必要ないのでは?と感じてくる。しかしコンビニも毎日全く同じものを売ればもちろん売り上げは非効率的だ。体内だって同じだ。抗体を効率よく活動させたり、臓器を効率よく休ませるために、体内時計はプログラミングされてきた。体内時計は必要なものなのだ。私自身もこのように考えた。

 

 

近年の夜更かしや活動がこのような身体のタイミングに反することで、人体に様々な疾患を及ぼす、ということがわかったと思う。

 

 

その他本筋にかかわらず本書で得た知識

体内の周期には23時間から26時間までの個人差がある。これは一般に言う朝型と夜型に関係している可能性がある。

平日と週末の睡眠差が大きいと肥満になりやすい。

白夜の環境下で暮らすシカには体内時計が存在しない

家族や他社とのコミュニケーションは体内時計を修正する作用があり、認知症予防にもつながる。

体内時計を利用した薬の服用方法で、新薬を制作するコストを必要とせず薬の効果を上げたり、副作用を抑えたりできる可能性がある。

 

個人的感想

要するに寝ろ。寝不足は万病のもとである、ということだ。夜の活動も万病のもとである。ということか。

実際私も思う。最近の大学生は23:00以降に寝て、10:00以降に起きる、これが当たり前になってきている。これでも生活はできるのだ、生活は。しかし多くの人は、この生活に当たり前になることで、この睡眠スタイルでは日中に軽度の寝不足の状態であって、本来はもっと体調が良い状態の自分が存在することを知らないでいる。

 

私はおかしなことに、基本的に何時に寝ても起床時間に大きな差がない、23:00に寝ても2:00に寝ても大体6:30くらいに覚めてしまう。だから、睡眠の質を上げるためには早く寝るという手段をとる、思い切って21:30に寝てみたことがある。すると次の日、授業がどんなにつまらなくても一度も寝なかったし、眠いとすら思わなかったのだ。これほどまでに普段の自分は寝ていなかったのか、と思う。現代人は22:00以降に寝るのが当たり前になってきている、さらに遅い時間まで夜更かしすることも普通だ。でも、これはここ数年の変化で起きた。赤信号をみんなで渡っている状態ともいえる。

 

イヤホンの耳への影響がまだこれから証明されていくといわれているように、睡眠による身体への影響はこれからわかってくることになるかもしれない。もしくは直接的な要因として明らかにされず、永遠に影の要因として潜み続ける可能性もある。

 

それと、もう一つ、照明の発明で今の時差ぼけが生じた、という話もあるけれど、時計というものが生まれて、日本が太陽の日の入り日の出にかかわらず標準時を決めたとこらからもうこの疾患の原因は始まってるんじゃないかとも思う。

 

とにかく、体内時計は多くの生活習慣病にかかわるということだ、この時代、縄文みたいな生活は不可能だけど、このことを心にとどめておくだけでも、自分の健康維持のヒントになるかもしれない