中国器入門 博物館でドヤろう
器はお好きですか
私はそれなりに好きです
器の魅力は、「変化していくこと」だと思ってます。必要であり、実用的であり、時には権威を表すものであり。また、色や形はその時代の文化やよく採れた素材を反映します。いいね!
そして、博物館とか行って1番よく目につくのも「器」
ところで皆さん
こちらは、上野国立博物館、東洋館貯蔵の「饕餮文瓿」とおっしゃるそうなのですが、皆さんこれで、「あーなるほどねはいはいわかる」ってなります?
また、旅順の博物館に行った時、こんな表を見つけました。
青銅器の様々な造形美について。
(画質が悪くぼやけてしまった)
フーン、すごいじゃん(わかんない)
展示を見るのは好きなんだけど、何が何だかわからん。何をどう見ればいいん?この形だと何でこの呼び名になるん?どこが特徴なん?
こういう状況に割と直面する。
せっかくだからちょっと詳しくなりたい!
というわけで器の形の分類分け、形の見るポイント、模様、使い道などの視点で見ていきたいと思います!!
今回は春秋戦国時代までの、あの全体的に土色緑色の、カラフル要素なしで1番見ててわかりにくい分野(即ディスり
つまり、
「「「青銅器」」」
についてです!
《器のざっくり時代の流れ》
まず、最初の頃、黄河文明で土器を使うようになります。
彩陶、黒陶、灰陶の時代ですね!
この頃、土器の役割は
①貯蔵する為の容器
②火を使う為の炊器
の大きく二つ。
殷代中期 青銅器が出てきます。
薄くて小さく、模様は簡単なものが多いです。
殷代の最盛期
酒を扱う器が多くなります。
賑やかにお酒を飲んでいる豊かなイメージがなんとなく湧いてくる!ザ最盛期!
この頃には器は、宗教とか儀礼の為の祭器だったり、権威の象徴としての役割が増えてくる
青銅器持ってる=権威の象徴って、やっぱり青銅器は貴重なものだったんでしょうか
それと、時代が進むにつれて青銅器はどんどんサイズが大きくなっていく傾向がありました。
さて、《青銅器分類わけ!》
青銅器の分類は、何やら色々ありました(雑
とりあえず文字を並べておきますと、主に
①酒器 酒を扱う為のもの
・容酒器 酒を入れる
・飲酒器 酒を飲む
・温酒器 酒を温める
②食器 食べ物を扱うもの
・炊蒸器 食べ物を蒸す
・盛食器 主に神に捧げる時に使う
③水器 水を扱う為のもの
④楽器 音を鳴らす為のもの
⑤兵器 戦の武器
⑥車馬器 馬や車についていた具
⑦度量衡 重さや長さを測る為のもの
と、まあ色々ありました!
見てほしいのは、酒、食べもの、水などを入れていた、ということ。
また、酒を飲む用、食べ物を調理する用、盛る用、があった、ということです。
今回はですね、後半が気になる人には申し訳ないのですが、入れ物というのか、器系?だけをやろうと思っております。その為④以降は取り上げておりません!あしからず。
気を取り直して青銅器の形を見ていきましょう。GO
容器の見方。
まず初めに容器の見方についてやろうと思います。
容器の形を観察する時、「この場所にこれがぁー」っと、位置を伝える手段として、容器を身体の部位と同じ呼び名で呼びます。主には、口、耳、肩、胴、などです。
右は個人のイメージです
酒器
・容酒器
壺(こ) 尊(そん) 罍(らい) 卣(ゆう) 盉(か) 兕觥(じこう)
壺(こ)
やや開いた口
両肩に一対の耳があり、持ち手の役割をします。
尊(そん)
尊という呼び名は元々酒器全般を指すものでした。
ラッパみたいに開いた口が特徴的で、しっかりした台が付いています。
罍(らい)
蓋が付いていて、肩がしっかりと張っています。
そして、両肩には輪が付いています。
卣(ゆう)
蓋が付いていて、酒がたくさん入る膨らんだ胴を持っています。
吊り手が付いているのでここを持って運べます!
また、口が注ぎにくい形にもかかわらず注ぎ口もありません。勺を使って酒を汲み上げ、爵(飲酒器の一種)に移した、と考えられています。
瓿(ほう)
こちら最初の例に出した器はこれでした。
卣と用途は同じ、勺で汲み出し爵にうつす。その為、形もほぼ同じです。違うのは、瓿は持ち運びをしないので、持ち手がない。
盉(か)
鼎や鬲に注ぎ口をつけた形をしています。また、取手が付いています。
鼎や鬲と同じように脚が付いているということは、温める役割があります。
酒と水や草など他の成分を温めて調合していました。古代熱燗ミックス!
兕觥(じこう)
怪獣形の尊 羊や牛や馬やらの動物の形で作られる。
飲酒器
觶(し) 觚(こ) 爵(しゃく) 斝(か)
觶(し)
コップ状のもの
口が広がっている
觚(こ)
筒形の酒杯
口はラッパ状に開いている
爵(しゃく)
雀を象ったもの、らしい。
流という注ぎ口があり、注ぎ口の縁に二つの柱がついている。
三角の形をした尾、の部分に取手がある。
三本の脚を持つ
先程の卣は、勺で卣から酒を汲み上げ、爵に移して飲んだという。
斝(か)
爵にやや似ていますが、注ぎ口の「流」とその正反対につく「尾」が無いという点で違いがあります。飲酒器の中で最も古いものとされています!土器時代の灰陶の時に出てきたあの形は斝に分類されます、確かに似ている!柱はないが
形の特徴は、口が丸く、三本の脚があります。
酒を温めることができる「温酒器」です。
食器
炊煮器
鼎(てい) 鬲(れき) 甗(げん)
鼎(てい)
主に肉類を煮ました。三本の脚があるので温め自由です。
鍋形の胴、一対の耳があります。
耳に棒を通してものを温めたとされます。あの可愛い耳みたいなのはその為にあったのね
また、鼎は権威の象徴とされていて、身分によって所持できる数に決まりがありました。
これのカクカクバージョン「方鼎」も馴染みがある!
鬲(れき)
三本脚を持ち、中はふっくらと空洞になっています。お尻みたいで可愛い
甗(げん)
上部に甑(読み:こしき、これを竹や木などで作ると蒸籠:せいろになる。)、下に鬲を持った合体青銅器。蒸気によって食べ物を蒸します!
調理方法も然り、この容器は饅頭や包子作りの大御所かな??!
超余談ですが、この写真左のモノ、上は蒸籠で、下は火を入れて北京ダックの皮を温めているんですけども、もしかしたら、これも甗の一つなのかも、なんつって、めちゃくちゃ祖先が甗なのかも、なんつって。
盛食器
簋(き)
高台が付いている。ふかした米や粟などを神に捧げた。
お椀状の器に圏足がついている。
耳や蓋が付いているものも、ある。
後半には口がすぼんだものも登場する
盂(う)
口が広くて鉢形、取手と高台が付いている。
簋(き)に似ている
水器
・盤(ばん)匜(い)鑑(かん)
盤(ばん)
匜(い)から注がれた水を受けるための道具
匜(い)
(カレー入れるやつみたい)カレーではなく手や顔を清めるための水を注ぐ為の容器 注いだ水を受けるのが盤だった
先程の酒器にある兕觥(じこう)から変化してこうなった!逆にシンプルになったんか?
鑑(かん)
氷を入れて食べ物を注いだ。
水鏡としても使われた!
容器はここまで!
後半ややしんどかった笑
さて、青銅器を見る上で最後にあともう一つ、ここだけ抑えたら一気に博物館のものを見るのが楽しくなる!
模様について
饕餮文とうてつもん
佐々木 仁「中国古代青銅器の器形と文様について」より。
このいかにも「怪獣顔」って感じのやつ、饕餮紋と言います。殷周期の青銅器に表された特徴的な模様です。
二匹の動物を左右対称に配置した怪獣文様と定義されています。一匹の正面顔だと思ってた
これは、宗教的儀礼のための祭器に彫られている例が多かった。模様そのものに魔力を込めていた、と考えられる!
この所狭しと描かれた生き物の文様、原始的造形には空白を恐れる「horror vacui 」という共通特色がある、とのことです。人間の心理として、何か模様がないと落ち着かない、というものがあったとは!この心理は「装飾」をつける重要な原因の一つとされているらしい、確かに、装飾って一見必要ないものとされてもおかしくないのに、装飾って、どの文明どの文化にも存在しますよね、面白い
さて、饕餮はだんだん崩れていき、さまざまな模様に派生していく!
・もう一度…試しに鑑賞
いやーもう、!疲れた
最後に、最初に出したこの青銅器をもう一度見てみましょう。以前よりわかる様になったかも?
もう一度言うと、この青銅器は、
「饕餮文瓿」(とうてつもんほう)と呼びます
饕餮文は、怪獣の顔をした模様のことで
瓿が、器全体の形。瓿(ほう)の特徴は、卣ににているが、持ち運びをしないので持ち手がない。もちろん持ち手をつけない、手でも持ち上げないので、耳も必要ない
せっかくなのでもう一つ、ついでに。
こちらは、「饕餮文鼎」(とうてつもんてい)
おなじみ饕餮の文様。
形は鼎 棒を通すために付けられた一対の耳と、炊煮器として食べ物を火にかける為に高さをこさえた三本の脚がついてますね
やってよかったけど疲れた
以上!
出典
佐々木仁「中国古代青銅器の器形と文様について」
Wikipedia「青銅器」
上野博物館 東洋館